大塚は、そのときある地方都市T市にいた。「いったい、ここを何回訪れているだろう」この街に出張するようになって久しい。ふと振り返ってみると、2004年も終わりかけのころを思い出す。年末もさし迫ったある日、いつもより少し忙しいオフィスのなかに大塚はいた。
お客さまのサポートを終えてひと息ついていたときだ。「プロジェクトの立ち上げを指揮してくれないか」その一言からすべてが始まった。当時、大塚は入社5年目。インターネットがはやりはじめた1999年に会社に入り、サポートセンターのスタッフとして長年キャリアを積んできた。温厚で人柄がよい大塚は、お客さまからも同僚からも人望が厚い。そんな大塚に大きなチャンスがやってくる。それは、ヘルプデスクを立ち上げるというプロジェクト。お客さまの企業名が告げられると、大塚は驚いた。なぜならば、クライアントは大手メーカー、ビッグクライアントだ。大塚にとって少し早いお年玉となった。ただし、次の言葉を聞くまでは。「そのヘルプデスクを3月にスタートさせたいんだよね…」顔が青ざめた。期間は2ヵ月しかない。まさか、それほどまでに時間がないとは。さっそくお客さまがいるT市に飛んだ。まだこのとき、この街をどれだけ訪れるか知るよしもない。
クライアントの要求はこうだ。「社外から社内情報インフラに入るときに必要なリモートアクセスを変更することになった。その際に、ヘルプデスクを作り直したい。しかも、複数あるヘルプデスクを一つにしたい」。お客さまのヘルプデスクは、トラブルの種類ごとにいくつも存在していた。数あるヘルプデスクをたらいまわしにされることもあったらしい。だから、窓口を一つにしたいという。いくつもある窓口を一つに集約するのは簡単なことではない。しかも、お客さまの社員は、日本はもちろん海外へも出張することが多いのだ。そのため、世界中からのトラブルにすべて対応をすることになる。とても責任は重い。クライアントが大きくなればなるほど、その要求は困難なものとなる。しかし、その要求に応えられたとき、とても大きな喜びを得ることができる。「お客さまの要求にとことん応えて、何とか短時間でこのプロジェクトを成功させたい」 |